私は大人になったある時期から本番は絶対"あがる"ようになってしまいました。 手が震える、手が冷たくなる、身体が固まるの三重苦で、もう何十年も付き合って来ました。 あがる方程式があります。 あがる度合い=自分の理想(自己顕示欲)−実力 例えば、今世紀最高と言われたピアニストホロヴィッツは、確かにあがって常軌を逸していますがテクニックも音楽もそれを遥かに上回っているので聴衆は何が起きるか分からずもっと興奮するわけです。 子どもはどうしてあがらないか?それは理想としているものが高くないからと言えます。 年齢を経るにつれ音楽的な知識が増え、精神的にも深くなって行く訳ですが、先程の方程式で行くとどんどん"あがる"度合いは高くなっていくことになります。 果たしてそれはよくないことなのでしょうか? よく生徒が上手く弾けなかったと落ち込んでるいることがありますが、大体は普段のレッスンの時よりずっといいことが多いのです。 でもそれは客観的なことなので本人に分からないのです。確かに技術的な面ではあがらない方がいいのですが、精神的な面でははるかに日常よりいいのです。 脳が自分があがっていると思いこんで音楽に集中できなくなることが問題なのです。 せっかくあがるという行為ですごいアドレナリンが出ているのでそれを上手い方向に持って行くことが大切なのではと思います。 それと大事なのは緊張状態の中でどう脱力をするかということです。これは訓練が必要ですが弾くことから離れて身体の動きを脳と合わせてて訓練することで緩和できるのか今研究中です。 自分ではもう"あがり"を克服する時間は残されていないかもしれませんが、悩んでいる人に対していいアドバイスをしていくことは出来るかもしれません。 それが"あがり"で悩んでるいる人の役立つなら 負から得た産物とも言えます。私が嫌だと思っている"あがり"の付き合い方の一つかもしれません。
青村理恵子
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