子どもの頃ピアノの練習は先生が怖かったせいか絶対しなくてはいけない憂鬱な時間だった。
その後音楽大学を目指すようになり試験やコンクールに追われて練習時間はいつも必死だったのだが、大学に入学してからは毎日の練習が楽しい時間に変わった。それは、新しい先生との出会いだったり、知らない曲を沢山勉強出来た事が理由だったのかもしれない。
大学を卒業した後、私はベルギーに留学をしたのだが、留学した当初は語学も全然出来なかったし、今とは違って携帯電話もなくて日本との連絡手段は手紙と高い国際電話だけ、ホームシックになりながらとにかくがむしゃらにピアノに向かった。寂しかったし、唯一安らげるのがピアノの時間だったのかもしれない。
その後友人が出来、語学が上達してからも毎日沢山練習したけれど、一番ひたむきにピアノと向かいあったのは留学当初だったように思う。
その後、帰国をして家庭を持つようになりピアノは練習時間を確保しないと弾けない状況になった。あんなに毎日一緒に過ごしていたのに。
子どもが成長し、自分の時間にゆとりを持てるようになって、またピアノの時間が帰ってきた。ピアノと一緒に年をとったせいか、私が優しい気持ちで弾くと優しい音が返って来るし、落ち込んでいる時はどこか音が沈んで返って来るような気がする。今までもこれからも、ピアノは私の人生の友達、これから先、歳をとって指がだんだん動かなくなっても1日に1度は子どもの頃からのピアノとの語らいを続けて行きたいと思う。
青村 理恵子
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